大腿骨近位部骨折とは・・・
大腿骨近位部骨折とは、太ももの骨の付け根部分の骨折です。
例)レントゲン写真の赤丸で囲まれたところが骨折しています。
大腿骨の近位部骨折は、主に3つの骨折(大腿骨頚部骨折・転子部骨折、転子下骨折)に分けられており、いずれも高齢者の方に多く、日常生活に大きな影響をおよぼすため、恐ろしい骨折と言われています。

大腿骨近位部骨折が恐ろしい理由は?

1.寝たきりや介護が必要になるリスクが高い
歩行や立ち上がりに重要な部位のため、骨折後、早期に十分なリハビリができない場合、筋力の低下により歩行や立ち上がり、長時間のいすに座ることができなくなり、ベッド上での寝たきりになることがあります。
2.寝たきり状態により、合併症のリスクが上がる
寝たきり状態になると、肺炎やエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)、床ずれ(褥瘡)、尿路感染を合併することがあります。
3.死亡率が高い
大腿骨近位部骨折を起こした方は、1年以内の死亡率が10%~20%程度あるという報告があります。
骨折が直接的な死亡要因というより、骨折により、合併症の発症や寝たきりになったことによる活動量の低下等で、全身状態が急激な悪化に関係していると考えられています。
4.その他
骨折による入院や環境の変化、痛みなどが重なり、認知機能の急激な低下(認知症の悪化)したり、入院や手術費用の負担や退院後の介護等の生活支援に関する医療費や介護費用の負担が大きくなることがあります。
大腿骨近位部骨折患者の現状は?
三愛病院で入院治療をされた方の2022年集計データより

大腿骨近位部骨折の発症者は…
・90歳代が38%
・80歳代が28%
・70歳代が17%
80歳以上の方に多い骨折となっております。

骨折を起こした場所は、屋内が7割を超えており、トイレでの転倒や椅子への立ちすわり、お風呂での発生が多くなっており、バランスを崩したり、椅子に座ろうとして滑って骨折をしている方が多い傾向でした。

退院時の介護度は、ほとんどの方が大腿骨近位部骨折の治療途中(外来リハビリ治療の継続、通所リハビリや訪問リハビリ、状態によっては、療養病棟等へ転院して入院リハビリの継続、老人保健施設等に入所してリハビリや日常生活動作の訓練が必要な状態)の段階のため、何かしらの介護が必要な方が多い状況で、介護認定を受けている方も多くなっております。
退院後のリハビリ治療等を継続することで、骨折前の生活状況に近づけていきます。
このように大腿骨近位部骨折の治療は、退院してもしばらく続くため、骨折を起こさないことが重要となっております。
転倒(骨折)を起こさないための理学療法士からのアドバイス
屋外での転倒により骨折をするとイメージされる方がいますが、実際は、室内での転倒が要因になってることを認識していただき、以下の内容に注意して生活する必要があります。


●トイレの移動
移動時は、杖や手すりを使い、トイレの中でもバランスを崩した時に、支えられるように注意しましょう。
また、夜間は、日中に比べて、ふらつくことが多くあります。面倒でも、杖や手すりを使用することで、急なふらつきでも転倒を減らすことができます。
●椅子やベッドの立ちすわり
椅子は、キャスターが付いていない、固定性がしっかりしたものを使用し、椅子の座面をしっかり確認して座りましょう。
椅子やベッドから立ち上がる時は、立ち上がり時に力が入らず、バランスを崩しても、体が支えられるように、手に物を持たず、手すり等をつかんで立ち上がりましょう。
●その他注意点
★床の小さな段差、たたみの境めでもつまづくことがあります。
★スリッパは、控えましょう。
★適度な運動をすることで、筋力を維持することが大切です。
セルフエクササイズにも取り組みましょう。
例1)椅子に座って、膝を伸ばして足を前に挙げて3秒キープ
例2)椅子に背筋を伸ばして座り、両足を床につけ、つま先だけを上に持ち上げる
転倒したことがある方は、特に気をつけましょう。